(会報Bulletin Board 10月号/11月号チョップスティックスグループ記事の詳細バージョン)

街中ガイコツだらけ!?メキシコの「死者の日」

毎年11月1日と2日は、ディズニー・ピクサー映画「リメンバー・ミー」のテーマにもなったメキシコ最大の祭典、死者の日です。日本のお盆のように、亡くなった先祖や家族を家庭に迎え入れるためのお祭りです。死者を偲び、感謝し、そして生きる喜びを分かち合うことを目的としています。

死者の日には陽気な音楽が流れ、たくさんの屋台が並び、パレードもあります。飾りつけも、オブジェも、人々の仮装も、カラフルなガイコツだらけ。お盆のような行事といっても、ラテンの国らしい明るい雰囲気に包まれたお祭りです。

ハロウィンとは違うの?

死者の日は、北米で行われるハロウィンと時期も近く、仮装するところも似ていますが、全く違う行事です。

死者の日の起源はアステカ文明にあります。スペインによる植民時代にキリスト教の要素も加わり、現在のようなお祭りになりました。

ハロウィンの起源はアイルランドのケルト民族のお祭りです。収穫を祝い、怖い仮装をするのは、悪霊を追い払うためです。

死者の日には何を食べる?

死者の日のお料理ついて、メキシコ在住のリリー・エレーラさんに伺いました。

リリーさん

━ 死者の日に用意するものを教えてください

死者の日には、たくさんの物をお供えします。故人の写真、食べ物、飲み物、お花、キャンドルやお香、パペル・ピカード…これはメキシコの装飾工芸品で、カラフルな薄葉紙に細かいデザインを切り絵のように切り込んで、たくさん繋げたものです。そして故人の持ち物と十字架。

━ 食べ物と飲み物は、どんなものですか?

頭蓋骨を象ったカラフルな砂糖菓子、塩、水、それからオレンジ、バナナ、ヒカマなどの季節の果物や、パン・デ・ムエルトと呼ばれる甘いパン。もし故人が愛酒家だったなら、テキーラ、ビール、ロンポペ(卵酒)、メスカル(リュウゼツランのテキーラ)も供えましょう。そしてもちろん、故人が好きだった食べ物も!

━ どんなお料理を作りますか?

メキシコにはたくさんの種類のお料理があって、地域によっても違いがあったりもするけれど、今回はメキシコで広く愛されているタマレスというお料理を紹介しますね。ピカディーヨと呼ばれる、牛ひき肉と角切りにした人参やジャガ芋の煮込みを入れたもの、チキンとグリーン・ソースを入れたもの、デザート用の甘いものなど、タマレスにはたくさんの種類があるんですよ。

タマレスの美味しさの秘密は、生地作りにあります。メキシコ料理には、トルティーヤと呼ばれるトウモロコシの粉で作った生地が欠かせません。近年は、小麦粉で作ったトルティーヤも一般的になってきているけれど…。メキシコには、トルティーヤを専門に扱うベーカリーや、生地を作るためのニクスタマル・ミルという専用の機械もあるんですよ。

━ 美味しそうです!

ママから教わった秘伝のレシピを、特別に教えてあげましょう!

“ビーフ・ピカディーヨ・タマレス” の作り方

まずはトウモロコシ粉の生地を作ります

材料
  • トウモロコシ粉:1㎏
  • マーガリン:200g
  • 食用油:¼カップ
  • 塩:小さじ1
  • ベーキングパウダー:小さじ1
  • 鶏だし:500ml
作り方
  1. 大きめのボウルに、トウモロコシ粉、マーガリン、食用油、塩、ベーキングパウダーを入れます
  2. ブレンダーを使って、なめらかになるまで混ぜます
  3. 別のボウルに(2)の生地と鶏だしを少しずつ加え、その都度ブレンダーか手で混ぜます。バナナの葉やトウモロコシの葉の表面にのばせる位の柔らかさにします
  4. 全ての生地と鶏だしを合わせたら、もう一度ムラがなくなるまで良く混ぜます
バナナの葉 トウモロコシの葉

次にビーフ・ピカディーヨ(タマレスの中身)を作ります

材料
  • 牛挽肉:500g
  • じゃが芋(大):2個
  • 人参:3本
  • 塩:適量
  • 黒コショウ:適量
  • クミン:適量
  • ニンニク(中):1個
  • 玉ねぎ:1片
  • トマト:2個
  • 水:適量
  • 食用油:適量
作り方
  • 塩、黒コショウ、クミン、ニンニク、玉ねぎ、トマト、少量の水をブレンダーにかけ、液状にします
  • 食用油をひいた鍋を中火にかけ、牛挽肉を炒めます。次に、さいの目切りにしたジャガ芋と人参も加え、炒めます。火が通れば(1)を加え、シチュー状になるまで良く煮込みます
  • 味と水分が具に染み込むまで、少し寝かせます
  • これで“タマレス”の中身のできあがり!
トウモロコシの葉に生地をのばす 包んで結ぶ
蒸し器に、タマレスをピラミッド状に並べて、一時間ぐらい蒸します

さぁ!そうしたら、トウモロコシ粉の生地を大きなスプーンに山盛り一杯ぐらいとって、バナナの葉かトウモロコシの葉の真ん中に置き、のばします。更にその上にビーフ・ピカディーヨをのせて、中身が漏れないように包みます。必要に応じ、開かないように結んでください
さぁ、火が通ったら、メキシコの代表的な料理“ビーフ・ピカディーヨ・タマレス”のできあがり!美味しいタマレスをたくさん召し上がれ!これが、ママが私に教えてくれたレシピです。地域や家庭によって、使うスパイスなどが少しずつ違いますが、どの家のタマレスも美味しさの秘訣は、作る人の愛情と、死者の日に伝統的なお料理を皆で分かち合いたいという強い思いです。日本の皆さんにも、メキシコの代表的なお料理を紹介することができて、とても嬉しく思います。
聞き手:岡野 薫